【岡山県】スポーツで町おこし!その秘訣とは!?

2017.10.06

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■岡山県のスポーツ推進計画プログラム

今回のスポーツマネイジメントコラムは、岡山県を取り上げたい。その昔、“吉備の国“と呼ばれた岡山県は、鬼退治で有名な童話、桃太郎の舞台である。東は広島県、西は兵庫県、北は鳥取県と県境を接し、南は瀬戸内海に面している。降水量1mm以下の日数が日本で一番多いことから「晴れの国」ともいわれるが、その一方で、北部の中国山地沿いでは冬季になると積雪が1メートルを超える豪雪地帯で、氷点下10度を下回ることもある。

岡山県のスポーツ振興計画を岡山県のHPから調べてみると、当初、平成16年度から平成25年度の10年間を計画期間とするスポーツ振興基本計画を進めていたが、ここ2、3年のうちに国のスポーツ基本法の制定や、スポーツ基本計画の策定など、国の動向に変化があったため、岡山県もスポーツ振興基本計画を全面的に見直し、県民の豊かなスポーツライフの構築、未来に羽ばたくアスリートの育成・支援、元気あふれる地域の創出などを目指した岡山県スポーツ推進計画を策定した、とある。

 

 

■岡山県の人口とスポーツの分布

岡山県の人口は約194万人(2013年現在、岡山県HPより)、そのうち15歳未満人口が261,026人(13.6%)、15歳以上65歳未満人口が1,156,566人(60..2%)、65歳以上人口が502,944人(26.2%)(うち75歳以上人口が262,779人(13.7%))である。岡山県南部は人口増加が堅調だが、北部の人口減少は顕著であり、15歳未満人口が75歳以上人口を0.1%ながらも上回り、少子高齢化が進んでいることが分かる。

岡山県の人々が自ら好んで行うスポーツとしては、第1位のウォーキング・軽い体操、2位のつり、第3位に水泳、4位はゴルフ(練習場を含む)、5位はジョギング・マラソンとなっている。

岡山県スポーツ分布

では、プロチームの動向はどうだろうか?東隣の広島県には広島カープにサンフレッチェ広島、西隣の兵庫県には阪神タイガースにヴィッセル神戸と、老舗のプロ野球チームや人気のJクラブが存在していて、二県に挟まれた岡山県はパッとしないというか・・・、これまではスポーツに関する興味がそれほど強くなかったのかもしれない。

ところが、ここ10年ほどで状況が大きく変わってきている。平成13年(2001年)には女子バレーボール・Vリーグである岡山シーガルズが本拠地を岡山市に移転し、同年、美作町(現:美作市)に女子サッカーの湯郷Belleが設立されている。そして、平成17年(2005年)にはファジアーノ岡山(サッカー)が設立され、スポーツへの関心が高まり、チーム強化と活発な町おこしの動きがうまく機能して、成功事例を次々と生み出すようになった。

 

 

■岡山県内を本拠地とする主なスポーツチーム

岡山県プロアマ団体

 

 

■岡山県の取り組み

岡山県のHPを立ち上げてまず気がついたことは、「自治体」のサイトに「民間」のプロスポーツチームの名前が数多く登場していることだった。

“岡山県内に活動拠点を置いて地域に密着して活動し、日本のトップリーグ等で活躍しているチームの活躍は、岡山を全国に強くアピールするとともに、県民に大きな希望と感動を与えてくれます。”

と岡山県自ら、サイト上で積極的にプロスポーツチームを応援しよう!!と県民に訴えかけているのである。

プロチームを応援しているだけではなく、平成21年9月には「健康・体力・スポーツに関する県民意識調査」を10,000人を対象に行い、その意識調査の項目中に「岡山県選手(日本選手)がオリンピック等で活躍するために必要な公的補助」について県民に問うている。

実際、夢アスリート発掘事業(小学校3年生の児童を対象に、将来有望な選手を早期発掘・育成するためのプログラム)を平成19年~平成22年まで実施するなど、ユニークで活発な活動を行っている。

 

 

■岡山からJ1チームを誕生させる県民の熱意(ファジアーノ岡山)

ファジアーノ岡山は、2009年度からJ2に昇格し、さらなる上を目指すチームである。もともとの母体は川崎製鉄水島サッカー部という実業団チームであったが、企業側の事情により親会社が神戸に移転し、移転したサッカー部は後にヴィッセル神戸となり、岡山に残ったサッカー部が後にファジアーノ岡山となった。

ファジアーノ岡山については、ごく最近まで、練習環境が整っていなかった。人口芝の練習場を使用することによりケガ人が続出し(人口芝は足に負担がかかる。通常は天然芝で練習する。)、シャワー室やマッサージルームを備えたクラブハウスのない中、練習後のクールダウンは子供用のプールで行わなければならない有り様であったという。

そこで、岡山県サッカー協会とサポーター有志は、2010年8月~10月までのわずか3ケ月で28万4千人もの署名を集め、要望書を岡山市に提出。約1年3ケ月の工事期間を経て、9億円もの資金を投じて政田サッカー場を整備し、2013年4月から使用を開始した。

9億円の設備投資のうち、80%以上が寄付で賄われたことになり、ファジアーノ岡山が市に支払う施設利用も、一般の利用者と同額という優遇措置を受けている。

岡山県、岡山市の自治体と岡山県民の熱意がファジアーノ岡山を強力に後押ししたことになる。

 

 

■町おこしに温泉旅館組合と市がスポーツチームを運営(岡山湯郷Belle)

岡山県、湯郷温泉は美人の湯として知られ、1,200年の歴史を誇る由緒ある温泉街である。2011年、この「湯郷」の名前を日本中に知らしめたのが、FIFA女子ワールドカップであった。

発足当初は「官と民(美作市・岡山県サッカー協会・湯郷温泉旅館組合)」がチームを運営していたが、2009年4月1日以降はNPO法人を立ち上げ、運営が移管されている。市の職員が出向して運営に携わっていたり、現在も官民一体となってチームを運営している好例であろう。

湯郷Belleは、今や超有名選手を抱える有名チームとなったが、2001年の結成当初は高校生だった選手が温泉旅館やスーパーでアルバイトしながら練習生活を送っていたというから、町が選手を育て、町が強豪チームを育てたということに違いない。

湯郷で育った選手が他チームに流出しないことを見ても、運営側・市民・そして選手もろとも地域密着の強い絆で結ばれているチームなのではないだろうか。

 

 

■最後に

岡山県は、この10年間で急激にスポーツ立県として台頭してきた感がある。自治体が持つ影響力、潜在的な能力はどこの都道府県でも本来持ち合わせているはずなのだろうが、誰がイニシアティブを取るかによって、そして、県民がどれだけ関心と熱意を持つかによって、10年後の姿は全く違ったものになるように感じた。

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