プロ野球の観客動員数増加―観客を呼び込む工夫

2016.10.18

プロ野球の観客動員数増加―観客を呼び込む工夫の写真

 

1、プロ野球観客動員数の推移

 

今年度、プロ野球の1試合当たりの平均観客動員数はセ・リーグ32,282人、パ・リーグが25,950人だった。ここ10年で一番の集客数だ。1980年台後半からセ・リーグは3万人、パ・リーグは2万人を超え、2004年までこの高水準を保っていた。だが、2005年から両リーグとも、前年から2割以上の減少を見せている。ここ10年の動員数は年々上がっているが、2004年以前の水準までには至っていない。

だが、2004年から2005年に球界を揺るがす大きな出来事があったわけでもない。それまで入場者数を球団ごとに発表していたものを、2005年から実数で統一したためだ。東京ドームでは席数4.7万人のところ5.5万人、福岡ドームは席数3.85万人のところ4.8万人と発表していたのだ。

日本プロ野球の観客動員数は着実に伸びており、全12球団の総数は昨年、2432万人を記録。今年はそれを上回る2498万人で、実数発表以来過去最多となった。野球人気の低下が叫ばれる中、各球団はどのように集客を伸ばしているのだろうか。

 

 

2、各球団の取り組み

 

広島カープの本拠地、マツダスタジアムは2009年に完成したばかり。この球場の魅力は、スタジアム内を一回りできるコンコース。外側には様々な飲食店が軒を連ね、内側からはグラウンドを見下ろすこともできる。さらに、子ども向けの遊具から、球場内でバーベキューを楽しめる施設まである。ボールパークと呼ばれるアメリカの球場のように、楽しめるスタジアムを目指している。

「世界に誇るボールパーク」を目指す楽天は、今年グラウンドの人工芝を天然芝に張り替えた。さらに、左中間席後方には高さ36メートルの観覧車を設置。電光スコアボードのLED化やボックスシートの新設など、約30億円の総工費をかけて改装が行われた。

また、DeNAは横浜スタジアムの「コミュニティボールパーク化」を進め、グラウンドの天然芝化と客席の拡大を構想している。DeNAが球団経営を始めた2012年以降、着実に動員数を増やしてきた。ベイスターズの昨年の観客動員数は、1試合平均25,546人、今年も26,933人と増加傾向にある。横浜スタジムの収容人数は3万人。さらなる客数増を目指す。

他にも、アニメとのコラボ、グッズやフードの充実や選手参加型のイベントや人気歌手といった斬新な企画を次々と打ち出し、各球団集客に力を注いでいる。

 

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3、メジャーの人気と人を呼び込む仕組み

 

各球団が参考にするボールパークだが、本場アメリカではどんな工夫が凝らされているのだろうか。

今年のメジャーの1試合平均の観客動員数を見ると、30,163人で日本のプロ野球と、実はそれほど変わらない。だが、個別に見てみると、球団ごとに大きな格差が出てくる。毎年トップはロサンゼルス・ドジャースで、今年の1試合平均動員数は45,719人。一方、最も少なかったタンパベイ・レイズは15,878人と苦戦を強いられている。

 

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人気球団はボールパークをうまく使い、ファンを集めている。そもそもボールパークという言葉だけで、行くとどこか楽しそうな印象を与えてくれる。球場によって雰囲気や造りが様々で、野球が良くわからない人でも楽しめる場所となっているのだ。

アメリカの代表的なボールパークと言えば、ボストン・レッドソックスの本拠地、フェンウェイパークだろう。100年以上の歴史を誇るこの球場には、グリーンモンスターと呼ばれるメジャーの球場の中でも1番高いフェンスがある。かと思えば、メジャーの球場で1番低いフェンスもフェンウェイにある。ライトのブルペン前にあるフェンスは高さ90cmしかない。その歪な形が、地元ファンに長年親しまれている。

他にも、外野左中間後方に機関車が走っているミニッツメイドパーク、スタンドに設置されたプールから観戦できるチェイスフィールド、右中間後方のレンガ倉庫とのマッチングが絶妙なオリオールパーク・アット・カムデンヤーズ、外野後方の景観が美しいPNCパークなどがある。

逆に、人気球団に比べると、不人気球団は球場の評判があまり良くない。タンパベイの本拠地はアメリカでも数少ないドーム型スタジアム。「解放感がない」「地下駐車場のよう」といったネガティブな声が多い。今年二番目に動員数が少なかったオークランド・アスレッチクスの本拠地、オー・ドットコー・コロシアムは1試合平均18,784人だった。設備の老朽化が著しく、排水設備も故障ばかりで、魅力的なスタジアムとは言い難い。

 

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アメリカでも日本でも、来て楽しいと思える球場を目指す球団ほど、ファンは増えているように感じる。見てくれるファンがいてこそのプロ野球。その球場でしか味わえないオリジナリティを出すことで、地元ファンを根付かせることに成功している球団は多い。野球を楽しむことはもちろん、それ以外にも面白いものを求め、ファンはボールパークを訪れているのだ。

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