目指すはナショナルチーム入り。オリンピック見据え「今」を努力。

2016.07.12

目指すはナショナルチーム入り。オリンピック見据え「今」を努力。の写真

世界44ヵ国572名の選手が出場し、2015年6月にドイツで開かれた国際射撃連盟(ISSF)ジュニアカップ大会。

関西大学・八川綾佑選手が男子10mエア・ライフル60発競技に出場し、ロシアの選手に1.9点の大差をつける圧巻の射撃で優勝した。国際射撃連盟主催大会のジュニア種目で日本人選手が優勝したのは28年ぶり。

快挙達成の熱が冷めやらない7月、取材班は八川氏のもとに駆けつけ勝利の秘訣に迫った。

 

 

射撃を始めたきっかけは体験入部

 

射撃という競技を知ったのは兄の影響です。大分県由布高校に進学した兄が射撃部に体験入部し、面白かったという話を聞いたんです。結局、兄は別のクラブを選びましたが、僕も兄と同じ高校に進んで射撃部に体験入部し、そのまま入ることになりました。

射撃部は自主練習が基本で、質問があれば自分から監督や先輩に聞きに行きます。そして指導を受けた内容を咀嚼し、自分の中に落とし込んでいました。
いま思うと高校時代の練習環境は恵まれていましたね。練習場所は高校ではなく、一般選手も使用する地域の施設でした。その施設にはアジア大会で銅メダルを獲得された礒部直樹選手を始め、力のある選手が指導や練習に来られていたんです。
強い選手の練習を見るだけで勉強になりますし、さらに直接指導を仰ぐ機会もありました。世界で活躍されている方から直々に、基礎的な練習方法から撃ち方ま で中身の濃い指導をしていただけたんです。高校時代のこの貴重な経験が、いまの自分をつくっていると思いますね。さらに射撃部でも優秀な監督と先輩に恵ま れ、日々の練習を通して競技に関する知識を増やし、応用力を高めることができました。
高校時代はビーム・ライフルからスタートし、高校2年時からエア・ライフルの資格を取って撃ち始め、徐々にエアにシフトしていきました。高校2年時の東京 国体ではビーム・ライフル30発競技で優勝、高校3年時はJOCジュニアオリンピックカップでエア・ライフル優勝、長崎国体では同じくエア・ライフルで3 位に入りました。

 

 

自ら貪欲に学ぶ選手が伸びる

 

関西大学に進学してからも、練習スタイルは高校時代と基本的には同じです。ただ練習時間は部員によってバラバラで、授業の空き時間を使って射撃場に 入ります。そして確認したいことがあればコーチや先輩に意見を求め、それを自分なりに考えて取り入れる。常に自分の心や体との対話が求められます。
また、地元に帰省し、高校時代にお世話になった方々の指導を仰いで撃ち方を確認することもありますし、試合に出た際に優秀な選手を見て学ぶこともある。射 撃は受け身の姿勢で教えてもらうだけでは伸びません。自分から貪欲に学びにいってこそ、得るものも大きいのかなと思います。

 

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世界で通用すると実感

 

今年の6月にドイツで行われた2015年度ISSFジュニアカップ大会に強化選手として出場し、男子10mエア・ライフル60発競技で優勝しまし た。初めての国際大会ということもあって、当初の目標は入賞圏内、なによりいい経験を積もうと挑んだ試合でした。だから優勝できて嬉しかったのはもちろん ですが、自分の戦い方を振り返り、すべてではないものの一部で世界で通用すると実感できた部分がありました。そこを伸ばしていけば、もっといい撃ち方がで きると自信がつきましたね。
決勝の舞台では前半、会場の雰囲気に呑まれて少し乱れてしまったんです。後半では、監督や指導者に言われてきた「外さなかったら勝てる」という言葉を思い 出し、気持ちを落ち着かせていきました。そしてベストショットではなくグッドショットを積み重ねる意識を持ち、徐々に立て直すことができました。
高い点数を狙おうと欲を出してしまうと、心の歪みが体の動きに表れて、タイミングがずれてしまうんです。だから欲を抑えてグッドショットを狙いに行くわけですが、周りからは面白くない撃ち方だと言われますね(笑)。

 

心をいかに整えるか

 

射撃は心の葛藤がモロに影響する競技です。だから心をいかに整えるかが勝敗を大きく左右する。選手によっては頭を空っぽにして無の境地に入る人もい ると思うのですが、そうすると僕の場合、ふと欲が生じた際に動揺してしまう。そうではなく、逆に雑念を入れます。たとえば好きな音楽を頭の中で流したり、 最近見たテレビやアニメの映像を思い浮かべたり。競技とは関係のない音や映像で頭の中を満たすことで、欲などが生じるスキを与えないわけです。ちなみに音 楽はBUMPOFCHICKENやVOCALOIDが多いですね。
集中力を維持するのも大切ですが、個人的には休憩を入れるタイミングが重要だと考えています。集中力が長く続く人はいいのですが、僕はそうではありません。だから他の選手より多めに休憩を取り、緊張と弛緩のリズムをあえてつくりながら、集中しやすい工夫をしています。
射撃のリズムの整え方は人それぞれだと思います。僕はまずジャケットを着ずに姿勢や感覚のチェックを念入りに行います。そのあとジャケットを着て再度構え、トリガーのチェックといったルーティンを行い、最後に弾を込めて撃つ。この流れは常に一緒で変わりません。
そのほか意識しているのは、ライフルのスイッチを入れるタイミングですかね。心の準備を整えてから射座に入り、立ち位置につき、その時点でスイッチを入れ、構えて撃つようにしています。

 

 

オリンピックを見据えて

 

射撃は長く続けられる競技であるとともに、若くして世界で活躍できる競技でもあります。今後の目標は、関西大学の射撃部としてはインカレで優勝すること。しかもただ勝つのではなく、納得したかたちで勝ちたい。自分との戦いになると思っています。
個人としては、ナショナルチーム入りを目指しています。そして最終的にはやはりオリンピックに出場して活躍したい。2020年に東京オリンピックが開催されます。現時点では出場枠に入る要件を満たしていないですが、やはり狙えるものなら狙っていきたい。
しかし焦るのではなく、いまは実績を積み重ねていくことが大事だと考えています。将来のオリンピックを据えながら、いま自分にできることを着実に、集中して取り組んでいきます。

 

 

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