【栃木県】地元密着は当り前!+αで差をつけろ!

2017.10.13

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■栃木県の歴史背景と環境

今回のスポーツマネイジメントコラムは、北関東に位置するスポーツ盛りだくさんな栃木県を取り上げたい。栃木県は海岸線を持たない内陸県で関東平野の中北部に位置し、福島県、茨城県、群馬県と隣接している。徳川家康ゆかりの地である小山や日光、皇室の保養所である那須、そして尾瀬国立公園を擁するなど、文化・歴史・自然ともに大変豊かな土地である。

県庁所在地の宇都宮市は東京都心部から約100km、東北新幹線で約50分と比較的近郊にあり、中核都市の指定を受けている。気候は、夏季は多雨多湿、冬季は少雨乾燥で、宇都宮の名物といえる雷は自転車競技のプロチーム名(宇都宮ブリッツェン)の由来にもなっている。

各種スポーツでは、全国レベルのプロ野球チームがあるわけでもなく、超有名サッカーチームがあるわけでもないのだが、種類の異なったスポーツチームがそれぞれ、味のあるスタイルで活動しており、地元住民の関心も高く、全国的にチーム運営成功のモデルケースとなっている事例が多い。

 

 

■栃木県の人口とスポーツの分布

栃木県の人口は約199万人(2012年現在、栃木県HPより)、そのうち15歳未満人口が262,796人(13.2%)、15歳以上65歳未満人口が1,254,119人(62.9%)、65歳以上人口が458,081人(23.0%)(うち75歳以上人口が226,539人(11.4%))である。

 

栃木県の人々が自ら好んで行うスポーツとしては、第1位のウォーキング・軽い体操、2位の登山・ハイキング、第3位に水泳、4位はゴルフ(練習場を含む)となっており5位には、栃木県の特徴といえる「サイクリング(自転車競技)」となっている。

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ここ数回、都道府県ごとにコラムを書くようになって、日本人のスポーツに関する嗜好が垣間見えたような気がしている。当たり前といえば当たり前なのであるが、海や湖のある県では、おのずと釣り好きが多くなり、山がある県では登山好きが多くなる。人の嗜好は自然環境によってかなり左右されるとはよくいうが、本当にその通りだと思った。

 

そして政府統計表を見に行くたびに感じることは、一般的に人気があると思われる野球やサッカーが、人々が自ら行うスポーツ競技の上位にはまずランクされないのである。

 

一定人数を編成してチームを作ったり、同時刻に集まって練習したり、集団で「勝つ」という目的意識を共有したりすることは、社会人になるとことのほか難しい。身体を動かす前に何らかの準備が必要な競技からは、みな遠ざかる傾向にあるのかもしれない。

 

DOする側(やる側)とWATCHする側(観戦する側)のスポーツは、当たり前なのだが全く違うのである。

 

 

■栃木県内を本拠地とする主なスポーツチーム

 

栃木県内に本拠地を置く、プロスポーツチームの動向はどうだろうか?サッカーJ3の栃木サッカークラブ、サッカーJFLの栃木ウーヴァFC、バスケットボール(Bリーグ)のリンク栃木ブレックス、アイスホッケーのH.C.栃木日光アイスバックス、社会人野球の全足利クラブ、自転車競技の宇都宮ブリッツェン、同じく自転車競技の那須ブラーゼン等々と、枚挙にいとまがない。

 

 

■栃木県の見解

 

まず手始めに栃木県に電話して尋ねてみたところ、県が公式にサポートしているプロチームは以下の4チーム、

・栃木サッカークラブ(J3)

・リンク栃木ブレックス(Bリーグ)

・H.C.栃木日光アイスバックス(アイスホッケー)

・宇都宮ブリッツェン(スポーツサイクル)

 

であった。上記4チームについてはどのチームをプッシュするということは特になく、県の施設を利用する際の施設使用料の優遇及び免除、県の会報を使ってチームのPR活動に一役買っているのだという。そしてさらに耳よりな情報を入手できたので、次の段階として宇都宮市に電話してみた。

 

 

■宇都宮市の取り組みとジャパンカップ

 

 

宇都宮市では、市の職員を栃木サッカークラブ、リンク栃木ブレックス、そして宇都宮ブリッツェンの3チームに派遣し、彼らはチームのスタッフとして、チーム内に溶け込んで仕事をしているというのである。地元を拠点とするプロスポーツチームを応援しようという意気込みを強く感じる。

いつ頃から宇都宮市(自治体)が積極的にプロチームを支援し始めたのかは定かではない。H.C.栃木日光アイスバックスの母体は古川電工のため、1925年設立と歴史こそ古いが、リンク栃木ブレックスは2004年に設立に向けて活動を開始し、栃木サッカークラブに至っては2006年に設立されているため、自治体の支援の歴史としては比較的浅いように思う。

ところが、「ジャパンカップ」というアジア最大の自転車ロードレースについては、1992年から毎年、宇都宮市で開催されており、その開催回数はすでに20回を超えている。このジャパンカップとは、毎年10月第3週末に開催され、ツール・ド・フランスなど世界の有名大会で活躍する超一流選手が集う、権威ある大会なのである。そしてこのジャパンカップを自治体である宇都宮市が「主催」しているのだ。

ジャパンカップは、高低差の多い難コース、ヨーロッパでの競技シーズンの終了時期、アジアでのシーズン開始という好条件も相まって、今年は10月18日(金)~10月20日(火)の日程で行われ、2日目に3万8千人、3日目には6万2千人を集め(初日はイベントやチームプレゼンテーションが行われた)、主催者である宇都宮市の競技運営レベルの高さを見せつける結果となった。

 

 

■自治体の持つ情報発信力

 

こうした宇都宮市の独自の取り組みによって、ジャパンカップといえば宇都宮、自転車競技といえば栃木県、という空気に20年の歳月をかけて徐々になってきているように思う。自転車競技と聞けば競輪しか思い浮かばず、ロードレースに馴染みの薄い日本人に対して、近年、自転車愛好家のすそ野が広がりつつあるのは、宇都宮市の奮闘があってこそで、これこそ、自治体の持つべき本来の力なのだと思う。自治体の情報発信能力は実に強力で有効な手段だと思うのである。

 

 

■観光+スポーツチームで地域活性を(自転車競技チーム、那須ブラーゼン)

 

今年初めにインタビューをきっかけに知り合うこととなった、ロードレーサーに再びお会いするため、最近、那須を訪れてみた。事前にfacebookを通じて地元自治体の支援の在り方について、ある程度の知識は持っていたつもりであったが、実際に訪れてみてハッキリ感じたことは、那須町が、那須塩原市が、真剣にスポーツサイクルというツールを使って、地元の観光産業を盛り上げようとしていることであった。来年は隣接する大田原市も支援体制に入るそうである。

那須という場所は、景色良し、信号なし、スポーツウェアでの飲食も気兼ねなし、ただし、アップダウンあり過ぎで・・・、本当に自転車愛好家にはもってこいの町である。

 

 

■最後に

自治体とスポーツは共存共栄の関係であるべきだと、最近、心から思うようになった。さらに、もうひとつ、何らかの魅力をエッセンスとして取り入れることができれば、これ以上のスポーツ振興、町の活性化はないのではないかと思う。

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