岐阜セイリュウヒーローズ(バスケットボールチーム)ヘッドコーチ兼スポーツアカデミー講師 酒井駿矢氏 インタビュー

2017.07.07

岐阜セイリュウヒーローズ(バスケットボールチーム)ヘッドコーチ兼スポーツアカデミー講師 酒井駿矢氏 インタビューの写真

スクール事業ではトップレベルの選手の輩出、
そしてチームではBリーグへの参入を目指して。

「仕事を通じて大好きなバスケに関われるのは幸せ」――。そう話すのは、岐阜県を拠点に活動するバスケットボールチームのヘッドコーチ(監督)と、バスケットボールスクールの講師を兼務する酒井さん。大学卒業後の進路に迷っていた酒井さんがスポーツに関わる仕事を選択したのは、大学バスケ部の恩師のひと言でした。そんな酒井さんにコーチとスクールの仕事とやりがい、今後の目標などについて伺いました。(聞き手:永広和也/執筆:高橋武男)

 

――いま酒井さんはバスケットボールチームのヘッドコーチとスクールの講師という、二足のわらじで活躍されています。まず仕事としてバスケットボールに関わるようになったきっかけを教えていただいてよろしいでしょうか?

私が所属しているのは、岐阜県でバスケットボールのスクール事業を展開している「一般社団法人岐阜スポーツアカデミー」という団体です。平日の16時頃から小中学生のバスケットボールスクールを開催し、私は講師として活動しています。

この講師の活動と兼務するかたちで、バスケットボールのチームである「岐阜セイリュウヒーローズ」のヘッドコーチを務めています。チームの練習や試合は主に土日なので、ほぼ休みなくバスケに関わっている状況ですね。

現在の立場に至った経緯については、少しややこしいので大学時代に遡って話をしましょう。

私は出身の大阪から愛知の大学に進学し、4年間、バスケットボールに打ち込みました。卒業後は地元の大阪で体育教師になりたいと漠然と考えていたのですが、通っていた大学では体育教師の免許が取得できないこともあって進路に迷っていたんです。

そんなとき、大学バスケ部の恩師から「bjリーグ(※1)のスクールが愛知で開校するから就職を考えてみれば」と勧められました。その恩師の言葉を受けて、「自分の大好きなバスケを仕事にできるなら」と思うようになり、2014年4月にbjリーグアカデミーに就職。以降、週2日のペースでスクールでバスケを教える日々が始まりました。

しかしながら、週2回の講師で生計を立てられるわけではありませんから、並行して母校の大学で事務職員として働きながら、恩師のもとで大学のバスケチームのアシスタントコーチをさせてもらうことになったんです。

こうしてbjリーグのスクールと大学チームのコーチを兼務し始めた直後の2014年6月、岐阜スポーツアカデミーのスクールが多治見市に開校することになり、この岐阜のスクールの講師も行うことになりました。

このように大学チームのコーチと2つのスクールの講師という、3つ掛け持ちの状態を2年ほど続けたのち、2016年4月に岐阜スポーツアカデミーに所属して活動を一本に絞ることになりました。

※1:株式会社日本プロバスケットボールリーグが主催していた日本のプロフェッショナルバスケットボールリーグ

 

 

――岐阜セイリュウヒーローズのヘッドコーチは、どのような経緯で務めるようになったのでしょう。

岐阜セイリュウヒーローズの運営会社は私が所属する岐阜スポーツアカデミーではなく、「株式会社スポーツクリエーション岐阜」という会社です。

岐阜県には大学が少なく、バスケに関しては実業団チームもプロチームもありません。そこで、多治見市を拠点にバスケットボールチームを発足し、スポーツを通じた子どもたちの育成や地域活性などを目的とした事業を行い、多治見や岐阜県を盛り上げよう――そんな主旨に賛同した地元企業10社の出資によって、2014年3月にスポーツクリエーション岐阜が設立されました。

このスポーツクリエーション岐阜の事業目的の一環で14年5月、岐阜スポーツアカデミーが設立され、さらに2015年8月にはバスケチームのトライアウトが実施され、岐阜セイリュウヒーローズとしての活動がスタートしました。

私自身は最初、岐阜セイリュウヒーローズのアシスタントコーチを任される予定だったんです。ところが、もともとヘッドコーチをされていた方が他のチームの専属となり、その方の代わりに急きょ、私がヘッドコーチに就任することになりました。

大学でアシスタントコーチを2年ほどやっていましたが、監督にあたるヘッドコーチは初めての経験でした。加えてコーチだけでなく、現在は運営母体のスポーツクリエーション岐阜の仕事も行っています。つまりスクールの講師とチームのヘッドコーチ、さらにチーム運営まで担っている状況ですね。

 

 

――二足のわらじどころか、まさに八面六臂の活躍をされているのですね。大変だと思うのですが、やりがいも大きいのではと思います。仕事の面白み、あるいは大変な面をぜひお聞かせください。

やはり自分の好きなバスケットボールというスポーツに、仕事として携われる醍醐味があります。その反面、運営会社の仕事は私ともう一人のコーチの二人で行っていることもあって、すべて自分たちで考え進めていかなければならないという難しさがあります。

スクールのほうは立ち上がってまだ3年目ですが、お陰様で子どもたちや保護者の皆さん、学校の先生方から評価をいただいています。この地域にはバスケができる環境が少なく、スクールを貴重な環境として受け入れてくださっているのです。

その成果として、スクール生がこの1年で大幅に増えました。私が来た昨年の4月の時点では、スクール3校(多治見校、可児校、関校)全体で40~50人でしたが、いまは100人を超えています。この地域でバスケットボールが徐々に根づいてきていると嬉しく思っています。

私はスクールでは教える立場ですが、子どもたちが楽しくバスケに打ち込む姿を見て反対に元気をもらえたり、教えられたりすることも多いんです。このスクールの活動は私の一番のモチベーションですね。

「地元の大阪に帰らないの?」とたまに聞かれますが、地域で人とのつながりがたくさんできましたし、岐阜から離れることはまったく考えていませんね。

 

 

――最後に今後の目標をお聞かせください。

まず私が所属しているスクール事業の目標は、バスケットボールの普及はもちろんですが、スクール生の中からトップレベルの選手を輩出することです。

次にチームとしての目標は、Bリーグ(プロバスケットボール新リーグ)に参入することです。その布石として、2017年4月にクラブ連盟に加盟しました。以前は無所属だったのですが、Bリーグへの加入を目指すにあたって、クラブ連盟に所属して活動する必要があったからです。

さらに来年度からは、社会人リーグへの参入を目指します。社会人リーグとは、実業団・クラブを統一したリーグで2018年度からスタートする予定です。この社会人リーグで結果を残すことが、Bリーグ(「B3※2」)参入への近道だと考えています。

今後も大好きなバスケットボールのために、そして岐阜の活性化と子どもたちの成長のために、スクールとチームの目標を共に目指して精いっぱい活動していきます。

※2:Bリーグは2016年9月に開幕した国内男子プロバスケットボールリーグで全45チームが参戦。B1、B2のプロリーグと、B3のプロ・アマ混合リーグの3部構成。

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