グッズ売上を劇的に伸ばす!東京ヤクルトスワローズのグッズ販売戦略

2017.04.21

グッズ売上を劇的に伸ばす!東京ヤクルトスワローズのグッズ販売戦略の写真

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スポーツチームにおいて、グッズの売り上げは、入場料収入、広告収入と並ぶ収益の柱だ。このグッズの販売をどのように伸ばすかは、スポーツビジネスにおいて大きなテーマといえる。グッズ販売の方法は、以前であればスタジアムでの直接販売がメインだったが、近年ではウェブによる販売も広まり、 展開の仕方も多様化している。

そのグッズ販売で、近年過去に例を見ないほど成功しているプロスポーツチームがある。それが東京ヤクルトスワローズだ。東京ヤクルトスワローズは、東京都新宿区の神宮球場を本拠地したプロ野球チームの1つ。プロ野球で東京といえば、読売ジャイアンツという球界の盟主が君臨している。 そういった事情もあり、ヤクルトスワローズはファンの獲得やグッズ販売の面で課題を抱えていた。しかし、近年では神宮球場の入場者数も大きく増え、グッズの売り上げに至っては、わずか4年で年間2億円から、年間10億円の規模まで拡大させることに成功した。

特に、このグッズの売り上げに関しては、目を見張るものがある。この不況の世の中で、わずか4年で売り上げを5倍にした例は、ビジネスの世界においてほとんどないだろう。

それではなぜ、ヤクルトスワローズがグッズ売り上げを5倍にすることができたのか。その理由を3つの観点で検証する。

1, 未開拓だった女性向けの製品を充実

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最大の要因といえるのが、女性をターゲットにしたグッズを充実させたことだ。 そもそも日本のプロ野球は、男性が観るものと考えられ、女性を意識したマーケティングはほとんど行われていなかった。しかし、近年の野球離れの影響もあり、プロ野球チームは、ファンの確保は重要なテーマとして取り組むようになった。その一環として、プロ野球チームは女性向けのサービスを拡充しようと様々な施策を打ってきた。

そもそも、世の中の半分は女性であり、女性向けにサービスを提供しないのは、世の中の市場の半分を捨てることになる。市場の半分を捨てるというのは、ビジネスにおいて大きなインパクトを持つことになる。

ヤクルトスワローズの場合、人気キャラクター・つば九郎にちなんだグッズの充実度が特徴的だ。実際、このつば九郎に関する製品が、ヤクルトスワローズのグッズ売り上げ躍進の大きな要因になっている。つば九郎の、見た目の可愛さとちょっとオヤジっぽい一面が女性ファンに受けているようで、このつば九郎グッズは大人気となっている。つば九郎の「可愛い」で女性ファンを惹きつけられたのは大きな要因といえる。また「可愛い」だけでなく、「オシャレ」を意識したグッズの販売にも注力している。チアダンスグループ・パッションがカタログの表紙になったり、ウェブページで、おしゃれな靴の着こなし方を紹介するなど、新たな製品の販売促進に着手している。

 

またイケメン選手のグッズも女性に好評だ。実際、神宮球場のライトスタンドに行くと、人気選手・山田哲人選手のユニフォームを着た女性ファンが非常に多い。独身かつイケメン選手は、女性ファンへのキラーコンテンツと言えるかもしれない。

 

2, オフィシャルショップの増設

ウェブ販売が広まりつつある現代において、オフィシャルショップをあえて増設した販売戦略も見逃せない。球団社長の方針のもと「いつでも買いに行ける」をコンセプトに二店舗構えた。

増設したショップは、いずれもファンが来場する際に通る道沿いにある。これにより、来場したファンがグッズに触れやすいよう工夫している。

また、オフィシャルショップは、オフシーズンも開店している。店舗の立地の良さを活かし、シーズンオフでもグッズの販売を継続しているのだ。

店舗を構えるのは、コストを考えると大きな負担になる可能性がある。一方で、店舗があることで、チームに馴染みの無い方にも存在を認識させることができるメリットもある。ヤクルトスワローズの場合、東京の一等地に店舗を出店しており、宣伝効果も十分期待できるだろう。

 

3,製品バリエーションの充実

ファンに飽きさせないように、グッズのバリエーションを増やしていることも特徴の一つだ。

定番のレプリカユニフォームやTシャツ、メガホン以外にも、一例として選手の「珍」記録達成Tシャツなど話題性のある製品を提供。このように、グッズのバリエーションを増やすことで、ファンのグッズへの関心を高めることに成功している。

製品を増やすということは、その分売れない製品が出てくるリスクもあり、在庫などを懸念されるかもしれない。しかし、ヤクルトスワローズの場合、一部の製品を受注生産で対応しているため、在庫のリスクはほとんどない。これにより、豊富な製品ラインナップを揃えることに成功している。

 

グッズ販売を伸ばす余地はまだまだある

このように、ヤクルトスワローズはグッズの販売をここ数年で大幅に伸ばすことに成功している。

特に、他のスポーツチームでも参考になるのは女性向けのグッズ販売だろう。女性層の取り込みは、プロスポーツチームにとって重要な戦略の一つである。

プロ野球界では、各球団の取り組みの効果もあり、女性の来場者数が増加している。スポーツは男性だけでなく、女性も当たり前のように観る時代が到来しつつある。

プロスポーツチームは、グッズ販売も含め、女性ファンへのアプローチを再考する時期にあるのではないだろうか。

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