10年・2,100億円。日本スポーツ史に類を見ない、超大型契約が大きな話題を呼んだ。
昨年、Perform Group が提供するスポーツライブストリーミングサービス「DAZN」がJリーグと放映権契約を結んだ。その期間と金額は、日本のスポーツ関係者に大きな衝撃を与える内容だった。
また、この巨額契約は、スポーツ界の枠を超え、大きな注目を集めた。
日本人の感覚からすると、Jリーグにこれほどの価値があるとは考えてもいなかったことだろう。
いや、Jリーグに限らず、スポーツにこれほどの価値があるとは想像もしていなかったかもしれない。
この過去に例を見ない大型契約には、どのような背景があったのだろうか。
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「日本」だけでなく、「アジア」で捉える
背景を捉える上で、キーポイントになるのは「アジア」だ。
ニュースでは、国内の視点で語られることが多かったが、この大型契約については、国外の事情を把握する必要があるだろう。
現在、日本の人口はおよそ1億2000万人。経済規模もGDPで世界第3位につける。
しかし、アジア全体で見ると、そのスケールは遥かに大きくなる。人口は全体で44億6000万人。世界の人口の6割ほどが集まっている。
その中には、GDP世界第2位の中国や、成長著しいインドやインドネシア、東南アジアのタイやマレーシアなども含まれる。
世界最大の市場規模を持ち、かつ高い成長率を誇るのがアジアの現状だ。
また、アジア域内は、時差が少ないのも大きな特徴だ。
例えば、日本とインドのデリーの時差は、およそ3時間しかない。
仮に、日本で19:00 開始の試合をライブ中継した場合、インドの時刻は16:00。十分視聴な可能な時間帯といえる。
中国や東南アジアであれば、時差はさらに短くなる。アジア44億6000万人の人が、ライブ中継を一斉に観戦する。私たちの感覚からすると、想像もできない規模だ。
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アジアにおけるJリーグの人気は?
ここで問題となるのが、Jリーグがコンテンツとして、価値があるかどうかである。
市場が大きいとはいえ、できる限り多くの人に受け入れられなければ、コンテンツとしての価値は生まれない。
しかし、この心配は杞憂に終わる可能性が高いだろう。
まず、競技は世界で二番目にスポーツ人口が多いサッカー。最近は東南アジアでも人気が高まっており、社会における位置づけもどんどん高まっている。
実際、ワールドカップのアジア予選では、スタジアムが満員になって、熱烈な応援を繰り広げている。日本が辿ってきたように、アジアにおけるサッカー人気もますます高まっていくことだろう。
その中で、Jリーグも、東南アジアを中心に非常に人気が高い。アジアの中における「日本」というブランドや、プロリーグとして歴史が深いのも大きいだろう。
そういった背景もあり、近年、東南アジアの有力選手たちが、続々とJリーグに移籍している。例えば、ベトナムからは、2013年に レ・コン・ビン がコンサドーレ札幌(当時)に移籍。また、昨年は水戸ホーリーホックにグエン・コン・フォンが加入している。どちらも、ベトナム国内では絶大な人気を誇るスター選手。このように、その国のスター選手がJ加入することにより、ファンがJリーグへ関心を持つようになるのだ。
今後、この流れがさらに加速すれば、アジアにおけるJリーグの位置づけはますます高まることが予想される。Jリーグのコンテンツとしての将来的も、十分にあるといえるだろう。
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44億6000万人を対象に広告宣伝ができる!?
このように、アジアにおけるサッカー人気は高まっており、それに比例して、Jリーグの価値が上がる可能性も高いといえる。
仮に、44億6000万人の1割がJリーグを観戦した場合、4億4600万人が視聴することになる。これだけの視聴者に、一気に広告宣伝ができるケースは、世界中見てもほとんどないだろう。
アジア市場を開拓したいグローバル企業にとっては、多額の費用を払ってもCMを流したいはずだ。
「DAZN」が投資した、10年2,100億円は、私たちが想像している以上のリターンを生むかもしれない。
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スポーツコンテンツをアジアに発信する価値
日本のスポーツコンテンツには、大きな可能性がある。この巨額契約から、うかがい知ることができるのではないだろうか。
スポーツ関係者にとって、Jリーグにこれだけの価値があるということは、大きな自信になるだろう。
また、サッカーに限らず、今後バスケットボールなど他の競技でも、同様のことが起こることが予想される。
資金不足に悩まされていた競技が、多額の資金が投資されることで、大きな発展につながる可能性を秘めている。
日本のスポーツ界は、今後スポーツコンテンツの可能性に目を向けて、世界に対して積極的に発信する必要があるかもしれない。
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