
1. 導入
5月7日、Bリーグのレギュラーシーズンが終了した。華々しい開幕から、その後も観客動員数を着実に伸ばしている。1部にあたるB1リーグは、1試合あたりの平均観客動員数が2,711人と昨季から約29%増加。入場料収入も全クラブ平均で昨対比50%増となっている。
盛り上がりを見せるBリーグ。そんな中、各チームの観客動員数も発表された。1位は千葉県船橋市に本拠地を置く、千葉ジェッツ。1試合の平均観客動員数が4,249人と2位以下を大きく引き離している。
しかし、ここで筆者は疑問に思うことがあった。なぜ、千葉のチームが1位なのか?
千葉は東京ほどマーケットが大きくない。東京の人口は1,363万人なのに対し、千葉は624万人。単純な人口ベースの比較だが、市場は東京の半分になる。
しかも、県内にはプロ野球・千葉ロッテマリーンズ、Jリーグ・ジェフ千葉や柏レイソルなどスポーツで競合になるチームがある。さらに、日本屈指のテーマパーク・ディズニーランドまであり、娯楽という観点でも、厳しい環境にあるといえる。
マーケットとしては、千葉ジェッツは決して恵まれた環境にあるとはいえない。
なぜ千葉ジェッツは観客を集めることができたのだろうか?
その結果の原因は、経営危機の状況から、地道に取り組んできた改革の中にある。
2. 5年前は経営の危機に
社長の島田氏は、当時の状況を「ないない尽くしの状況だった」と語る。
マイナースポーツのバスケットで観客は入らない。チケットが売れず、売り上げが伸びない。スポンサーもつかない。
お金がないので、人を雇うこともできず、社員が休み無く働く。結果として、目の前の業務に追われ、何のために仕事をしているかわからなくなる。
当時の千葉ジェッツは負のスパイラルに陥っていた。
この状況から、島田氏は社長に就任し、チーム改革に着手する。
3. 活動理念を決め、進むべき道を明確化
まず、島田氏が取り掛かったのは、活動理念とミッションを決めることだった。
千葉ジェッツが目指すべき方向性を定めるため、活動理念と13項目に及ぶミッションを作成した。
「千葉ジェッツを取り巻く全ての人たちと共にハッピーになる」
千葉ジェッツが何を提供するか、それは関わる人たちと充実感や幸せを味わうため。
ミッションは明確に決まった。
そして、13項目に及ぶミッション。ブースター(ファン)、スポンサー、地域社会を構成する行政や子どもたち、このステークホルダー(利害関係者)の多様性がスポーツビジネスにおける特徴の一つだ。千葉ジェッツ、ステークホルダー全員に関わるようミッションを作成した。
4. リスクを取って社員を増員。
また、当時の千葉ジェッツは、人手不足で多くの社員が業務を掛け持ちで行っていた。
これは千葉ジェッツに限った話ではない。プロスポーツチームにおいて、フロントの社員が足りないのは、よくある話しだ。
しかし、この状況を解消すべく、島田氏は増員に踏み切った。
チーム経営が厳しい中、社員を増やすのは大きなリスクになる。人件費は基本的に固定費であり、足かせになる可能性もある。
しかし、従業員の業務量が限界に達しつつあり、仕事に対するモチベーション低下も懸念点の一つだった。これを解消しないことには、チームを活性化させる新たなアイデアも出てこないと考えたのだ。
5. スポンサー集めに奔走。全体の7割が船橋市の企業・団体に
社内体制を整えるだけでなく、スポーツ経営もやはり実際に売上を伸ばす施策も必要となる。スポーツ経営のうち、売上に結びつくのは、スポンサー収入と入場料収入、そしてグッズ販売になるが、千葉ジェッツはスポンサー収入のテコ入れに取り組んだ。
千葉ジェッツは、以前から地域のお祭りに選手が参加するなど、地元との結びつきを大事にしてきた。地域社会への貢献を地道に行ってきたのだ。
島田氏は、そこに目をつけ、まずは本拠地の船橋市など行政から支援を受けられるよう動いたのだ。結果、千葉ジェッツは、2015年に船橋市とホームタウン協定を、そして千葉市とフレンドリータウン協定を締結するに至った。行政からのお墨付きができたことで、今後は地域の企業から多くの支援を受けることになる。
千葉ジェッツのスポンサーの7割は、地元・船橋市の企業や団体から構成されている。
まさに、地域密着型スポーツ経営の理想像といえるのではないだろうか。
6. 地域に根ざし、ファンを大切にする
その後、千葉ジェッツは業績を回復。公開されているIR情報では、5期連続の黒字を達成している。
チーム経営を行う上で、千葉ジェッツは、先に挙げた取り組み以外にも、ファンサービスの徹底にも取り組んでいる。また、優秀な選手を獲得することで、メインコンテンツである試合も、よりエキサイトなものになり、来場したファンを魅了している。
島田氏は、千葉ジェッツの再建は、まだ道半ばと言う。
しかし、千葉ジェッツのチーム経営は、多くのスポーツビジネスで参考になるべきところがあるのではないだろうか。
今後の千葉ジェッツの飛躍にますます期待したい。
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