あなたは年末調整か?それとも確定申告なのか?

2017.02.13

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先日、これから所属チームとプロ契約を結ぶというラガーマンから、連絡をいただきお会いした。何でも、4年も前に私が書いたコラムを読んでくださったうえでのお問い合わせだったというので、嬉しいやらびっくりするやらで、記憶の彼方に行ってしまっていた自分の過去記事を読み返してみると、ものすごく古い。そんな経緯もあり、このたび書き直すことにした。

 

ちょうど確定申告シーズンに突入する直前ということもあり、スポーツ選手の皆さんの参考になれば幸いである。年末調整と確定申告の違いについて、スポーツ業界で働くみなさんと、スポーツ選手に向けて解説してみたい。あなたはどちらのタイプなのか?

 

サラリーマン(給与所得者)で、ご自身の給与明細をじっくりと見たことのある人はいるだろうか。ほとんどの人が、税金の控除欄に「所得税」「住民税」と書かれて、いくばくかの金額が天引きされていると思う。「所得税」は日本国に納める税金、「住民税」は1月1日時点で居住している市区町村に納める税金である。

 

このうち、給料から天引きされている「所得税」は、1月~11月までの期間はドンブリ勘定で多めに天引きされていると思っていただきたい。年末調整とは、この多めに天引きされた「所得税」を、年内最後の12月のお給料(もしくは翌年1月)で取り戻す作業なのである。

 

 

あなたがサラリーマンの場合、1月1日~12月31日の間に稼いだ収入に対する税金計算(年末調整)は会社がやってくれる。年末調整の事務作業は、企業側に課された義務なので「ウチは年末調整とかやってないから。確定申告を各個人でやってください。」などと、総務や経理担当者から言われたことはないと思う。

 

サラリーマンの年末調整は、生命保険料控除証明書など、必要最小限の書類を会社に提出するだけでOK。ただし、赤ちゃんが生まれ家族構成に変化があった場合や、就職して年間103万円以上の収入が見込めるようになった家族がいる場合は、自分の勤め先の会社にその都度申告しておこう。ごくまれではあるが、年末調整で「還付」ではなく、「追加徴収」されてしまう人もいるからだ。追加徴収されるケースとして多いのが、妻や子供がアルバイトに精を出し過ぎて年収103万円を超えてしまったことを知らずに、扶養家族が実際より多い状態で普段給与計算されてしまっている場合である。扶養家族をひとり多い状態で1年間給与計算されたままになっていると、年末調整時に正しい人数で計算し直すと、驚くほど追徴課税されてしまう。扶養家族の人数は、12月31日時点で判定するため、年の途中で就職が決まったお子さんがいる場合や、配偶者がパート勤務を始めた場合などは、特に気をつけたい。自分の家族の稼ぎくらいは把握しておこう。

 

次は確定申告の話。これは多くのプロスポーツ選手に該当すると思われる。プロスポーツ選手は、一般的なサラリーマンの「雇用契約」とは異なり、所属チームと、一個人事業主として「請負契約」を交わしている。雇用契約と請負契約の大きな違いはズバリ「ケガと弁当は自分持ち」であるかどうかだろう。

 

雇用契約が規定時間内の労働力提供の見返りに給料が支払われるのに対し、請負契約は仕事の完了をもって初めて報酬が支払われるため、万が一、ケガや病気で試合に出られない場合は、収入を得ることができない。社会保険などの保障もないため、まさに「ケガと弁当は自分持ち」、雇用契約に比べ不安定な契約であることは否定できない。そのかわり、誰の指揮監督命令下に入ることもなく、所属チームからの拘束時間も最小限ですむ。そして何より、己の実力次第でサラリーマンでは考えられないくらいの収入を手にできる可能性がある。

 

では確定申告の方法とはどのようなものか?まず、収入の種類を分類する。スポーツ選手としての競技活動収入(事業所得)、TV出演・講演会活動・本の執筆活動によって得られる収入(雑所得)、家賃収入(不動産所得)、株式の売買や配当収入(株式等の譲渡所得・配当所得)等々・・・。そして、これらの収入にヒモ付けできる必要経費も分類して収入からマイナスし、収入の種類ごとに「儲け」をはじき出す。

 

1年間の収入(それぞれの収入ごとに分類) – 1年間の必要経費 = 儲け(所得金額)

 

 

儲け(所得金額)に対して税金は課税されるため、節税のポイントとしてはいかに多くの経費を計上するかということになる。1/1~12/31までスポーツの仕事で使った費用は、領収証をとにかく集めておく。領収証の出ない電車・バスなどの公共交通機関の代金もバカにできないので、必ずメモしておいて必要経費に入れる。クレジットカードでの支払明細は一枚一枚、残しておく。TV出演のための美容院代や衣装代も必要経費に入れてもまず問題ないだろう。ただし、プライベートで使った晩御飯のおかずや日用雑貨を必要経費に入れると、十中八九、税務調査で否認されるので注意したい。あくまでもスポーツの仕事で使った費用のみを必要経費にしよう。

 

スポーツ選手の主な必要経費

・練習場や試合会場までの電車・バス・タクシー・ガソリン・高速代

(公共交通機関の場合は領収証が出ないのでメモ書き程度でOK)

・トレーニングウェアやシューズ、トレーニングのための道具(10万円未満)の購入費用

・スポーツクラブの施設利用代

・スポーツ関係者との食事代、打ち合わせ費用(個人的な食事代・お茶代はNG)

・スポーツ関連の研修や勉強会への参加費

・スポーツ関連の書籍代

・パソコン購入費

・試合中や練習中のケガに備えるための傷害保険料

・TV出演やイベント出演、講演会のための衣装代

・スポーツトレーナーやマネージャーへ支払う給与

・携帯電話代(事業用部分と個人的な部分は合理的に分ける必要あり※ガソリン代も同じ)

・税理士や弁護士への支払い報酬

・減価償却費(車やトレーニング機器等、10万円以上の購入をした場合、一度に経費として落とすのではなく、少しずつ経費化していく方法)

 

確定申告時期は毎年2/16~3/15であるが、野球選手にとっては春季キャンプの開始時期、サッカー選手にとっては開幕直前の時期に当たる。自分の年間収支を確定させる面倒な確定申告と、シーズン前の大切な時期がぶつかるので、普段からこまめに領収証の整理はしておこう。(1年分まとめて一度にやろうとするとかなり辛い。)また、多少の費用を支払ってでも税理士に相談されることをお勧めしたい。

 

スポーツ選手に一番必要なことは自己管理だと思う。お金回りのこともそのひとつに加え、コツコツ準備して申告期限にしっかり間に合わせよう!!

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